ざっくり共産主義をみてみよう
- 2023.04.01
「ヨーロッパに妖怪が現れた、共産主義という妖怪が」。
この一文で始まるのが、 カール・マルクス (1818~1883)とフリードリヒ・エンゲルス (1820~1895) が 1848年に書いた『共産党宣言』 です。
この政治文書をきっかけに、 19世紀と20世紀に最も強い勢力を誇った政治運動のひとつが始まりました。
マルクスとエンゲルスがこの小冊子を発表した当時、共産主義は、失敗に終わった数回の蜂起や、曖昧で難解なドイツ哲学の著作を連想させる、 周縁的な運動にすぎませんでした。
それが100年後には、地球の半分を支配するまでになったのです。
共産主義者の考えによると、 19世紀初頭に始まった産業革命によって、労働者が貧困にあえぎながら働く一方で工場主と投資家が膨大な利益を手にするようになり、深刻な経済格差が生み出されたということになります。
さらに、 資本主義は巨大な富を生み出しましたが、中産階級 (ブルジョワジー)は、社会の中で権力の座を労働者階級 (プロレタリアート)と分かち合うのではなく、自分たちだけがその場に居続けようとしていると共産主義では考えます。
解決策としてマルクスとエンゲルスが提示したのが、労働者階級が生産手段を自らの手に握り、ふたりの言う「プロレタリアート独裁」 を樹立することでした。
ブルジョワジーが自ら権力を放棄することは絶対にないので、暴力革命は必然的に避けられないというのが、マルクスとエンゲルスの考えでした。
共産主義者は、資本主義を敵視していただけでなく、 帝国主義と宗教にも反対し、マルクスは宗教を「人民のアヘン」 と呼びました。
そのため反対者の目には、共産主義は西洋的な生活様式を直接脅かすものだと映っていたことでしょう。
しかし、貧困と社会的対立が深まる19世紀のヨーロッパで、共産主義は、 マルクスとエンゲルスが 『共産党宣言 』 を出して数年のうちに多くの支持者を獲得して着実に広まっていきました。
1917年のロシア革命では、共産主義者は理想を現実に移すチャンスを手にしました。
20世紀の世界政治は、資本主義と共産主義のあいだでエスカレートする衝突によって大きく特徴づけられており、中でも40年以上続いた冷戦は、この衝突を反映したものだったと言えるでしょう。
共産主義は、今でも中国など数少ない国々が表向き掲げているものの、その魅力の多くは、「労働者の楽園」のはずだったソヴィエト連邦での生活がいかに恐ろしいものだったかが世界中に明らかになると、 ほぼ完全に失われました。