囚人のジレンマの概要
- 2022.09.29
強盗容疑で犯人二名が逮捕されましたが、警察には有罪に持ち込むだけの十分な証拠がありません。
そこで警察は、ふたりの容疑者を引き離し、それぞれに同じ提案を持ちかけます。
もしふたりとも自白すれば、ふたりとも2年の刑に服す。
もし一方が自白し、もう一方が黙秘を続けたら、自白した方は釈放され、黙秘した方は10年の刑に服す。
しかし、もしどちらも自白しなければ、どちらも6ヶ月の刑に服すだけで済む。
どちらの容疑者も、もう一方が自白するのか黙秘するのかを知りません。
さて、黙秘すべきでしょうか、それとも自白すべきでしょうか。
この仮想の状況は「囚人のジレンマ」と呼ばれ、もともとは数学者アルバート・W・タッカーが言い始めたものです。
このジレンマには、ゲーム理論・経済学 進化論 心理学にとって重要な意味があります。
・囚人A、囚人Bともに黙秘した場合、 ふたりとも6ヶ月の刑に服す
・囚人A、囚人Bともに自白した場合、 ふたりとも2年の刑に服す
・一方が自白し、もう一方が黙秘した場合、 自白した方は釈放され黙秘した方は10年の刑に服す
囚人Aにとって合理的な選択は、仲間を裏切って自白することのように思えます。
そうすれば釈放されますから。
しかし囚人Aは、囚人Bもおそらく同じように考えるだろうと思っています。
その場合は、ふたりとも2年の刑に服すことになります。
もちろん、ふたりとも相手を信頼できさえすれば、6ヶ月の刑で済みます。
1980年、政治学者のロバート・アクセルロッドは、「繰り返し囚人のジレンマ」という実験を行いました。
基本的にこの実験では、参加するプレーヤーに囚人のジレンマを延々と行います。
同じパートナーと行うこともあれば、パートナーを替えて行うこともあり、プレーヤーは、繰り返す中で得た情報を使うことが認められています。
実験を進めていくと、プレーヤーからは、裏切る傾向が強い利己的な戦略を採るプレーヤーと、信頼する傾向が強い利他的な戦略を採るプレーヤーが出てきます。
長期的に見た場合、利他的なプレーヤーの方が利己的なプレーヤーよりも成績がよかったそうです。
最後の最後には善人が勝ったのです。
囚人のジレンマとは、各人が常に利得の大きい選択肢(絶対優位の戦略)を選ぶ場合、協力した場合よりも悪い結果を招いてしまうゲームなので、当たり前といえば当たり前の結果です。